「バカッター」の夏 個人に託された「公器」の危うさ

8月も残すところ数日だが、この夏は「バカッターの夏」として記憶されるかもしれない。国家公務員から未成年の少年たちまで、ツイッターやフェイスブックに代表される交流サイトの書き込みが問題化するケースが後を絶たないためだ。愚か者が正体を現すという意味で「バカ発見器」「バカッター」の異名も持つツイッター。日本は大丈夫なのか。

 

 ツイッターで相次ぐ非常識写真の投稿について、本紙が東京・大阪本社発行の1面でともに報じたのは今月25日。ネット上ではその後も連日のように、新たな非常識写真の発覚が続いている。

 「今度はバカが精米機の中に入る」「今度はお好み焼き店がバカッターの被害者に」…。報道されているのは氷山の一角にすぎない。26日には北海道警のパトカーの屋根に乗った写真を投稿した19歳の少年2人がパトカーに傷をつけたとして、ついに逮捕者まで出る事態となった。

バカとはさみは…

 こうした話題だけを目にすると、ツイッターなどのソーシャルメディアが「バカの道具」にしか思えなくなる。だが、ソーシャルメディアは東日本大震災で情報拡散に威力を発揮し、今年4月の米ボストン爆弾テロ事件では市民が容疑者の画像を米連邦捜査局(FBI)へ提供して捜査に貢献した。2011年のエジプト民主革命でソーシャルメディアが大きな役割を果たしたのも有名だ。要するに「バカとはさみは使いよう」なのだが、両極の落差は大きすぎる。

 今年に入って国家公務員による「暴走」も相次いだ。復興庁の元参事官による「左翼のクソども」暴言ツイート問題のほかにも、在スリランカ日本大使館の1等書記官は、自身のフェイスブックに同国政府関係者の写真を掲載し「風貌だけは『そのスジ』っぽかった」などと書き込んだ。外務省は書記官を戒告の懲戒処分にした。

 

 総務省は6月、「国家公務員のソーシャルメディアの私的利用に当たっての留意点」と題した文書を作り各府省庁に内規制定や研修を行うよう通知した。文書は「ソーシャルメディアの特性」をこう指摘する。

 

 「手軽かつ即時に発信できるという強みがある反面、熟考することなく発信してしまう利用者が多い」

 

 ネット上では「その通りだが、では熟考して発信するツイッターが面白いかというと…」という反応も起きている。

 

不可欠なインフラ

 一連の騒動を受け、「そろそろ、ICT(情報通信技術)教育とメディアリテラシー教育は義務教育に組み込んでもいいんじゃないかと思う」という意見もネット上にあった。確かに、その通りだろう

今月31日には、ツイッター社などが東京都港区で「ソーシャル防災訓練」を行う。首都直下地震が起きて帰宅困難になったとの想定で、港区の公式ツイッターが発信する情報などを活用し、指定された場所まで避難する訓練だ。解禁されたネット選挙でツイッターやフェイスブックがフル活用されたように、ソーシャルメディアには、われわれの社会をよりよくするために不可欠な存在となった側面が確かにある。一方で、恥を全世界にさらすこともできる。

 新聞・テレビなどのメディアは社会の公器とされるが、ネット社会ではメディアが一人一人の手に託されている。公器を地に落とすか否か、決めるのは個々の意識だ。(徳)

【用語解説】ソーシャルメディア

 

 ユーザー同士の情報交換によりインターネット上に成り立つメディアの総称。ブログや掲示板のほか、ツイッターやフェイスブック、LINE(ライン)など多様なサービスがあり、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)とも呼ばれる。総務省の情報通信白書によると、国内のツイッターとフェイスブックの利用者は昨年3月時点でいずれも約1400万人。

産経ニュースより引用しました。