「かぐや姫の物語」に抜てきの朝倉あき、起用理由は「ワガママな声」

高畑勲監督の14年ぶりとなるスタジオジブリ最新作「かぐや姫の物語」が公開される。日本最古の物語文学である「竹取物語」を原作に、かぐや姫が地球に姿を現した理由と、やがて月へ去らねばならなかった波乱の運命を“かぐや姫の罪と罰”という視点で描いた製作期間8年、総製作費50億円の超大作。そのヒロインに、数百人のオーディションから現在22歳の新進女優・朝倉あきが抜てきされた。「今の女優さんは受け身の声が多い。でも彼女の声はワガママだ」と高畑監督。竹やぶでただ1本光り輝く竹から誕生したかぐや姫のごとく“発掘”された朝倉が、作品に瑞々しい生命力を与える結果になった。

 2008年にスクリーンデビューを果たした朝倉のもとに、本作のオーディションが舞い込んだのは11年の春頃。しかし、結果は「ボロボロで『これはダメだ』と思った。帰り道で泣いてしまったほど」だという。「ですから、しばらくして『決まったから』とお電話をもらったときは、喜びよりも驚きのほうが強かったです。こんなことが自分の身に起こるのかという気持ちで、どう受け止めたらいいかわかりませんでしたね」。

 先に声だけを収録するプレスコという手法が採用され、11年夏、翌12年夏の2回、そして映像が仕上がり段階に入った今年9月に追加のアフレコが行われた。かぐや姫との付き合いは2年以上に及び「その間ずっと、かぐや姫がどんな女の子なのか考え続け、忘れることはありませんでした。時折台本を開けば、また新しい発見があって」とキャラクターへの思い入れは格段だ。11年に行われたプレスコでは、かぐや姫の育て親である翁(おきな)を演じ、翌年亡くなった俳優の地井武男さんと共演を果たした。「ご一緒したのはわずかな時間でしたが、私はなんて幸せ者なんだと。常にニコニコされていて、自然体。今思うと、私の緊張を解そうとお気づかいくださったのかも。本読みの段階から全力で臨んでいらっしゃって、その姿に引っ張っていただいた」と尊敬の意を表す。また、媼(おうな)を演じる大先輩・宮本信子からも学ぶことは多かったはずだ。

 「最終的にかぐや姫は月に帰ってしまうんですが、もし、もっとお互いの気持ちを分かち合えていたら……ってせつない気持ちにもなりますね。翁はかぐや姫を良家に嫁がせ、幸せにしたいという一心ですが、かぐや姫は(精神的に)幼いまま成長し、世間の常識に縛られ、身動きが取れなくなってしまう」。そんなかぐや姫の葛藤は、自分自身にも重なるといい「私自身、『若いから、経験が少ないから』という理由で自信をなくし、精いっぱいの虚勢を張って、背伸びしたことは数知れずなんです(笑)。翁と媼がかぐや姫を思う気持ち、そして私が先輩方に助けていただいた今回の経験を通して、ときには誰かに助けを求めてもいいんだと気づきました。やっぱり人間、ひとりでは生きていけないんだって」としみじみ語る。

 現在は、本作の全国公開を前に“主演女優”としてプロモーションに奔走する日々だ。「作品に参加させていただき2年。こうした経験は初めてですが、やっと作品を背負う思い、これまでの積み重ねの大切さを自覚できるようになりましたね。今は背筋を伸ばして、この映画のこと、どんどん宣伝していかなくちゃと思っています!」と決意を新たにする朝倉。それでもインタビューを終え、カメラを向けると「まだ慣れないもので……」と戸惑いも隠せない様子だ。

 その姿はまさに、都での華やかな生活になじむことができない素朴なかぐや姫そのもの。ただ、月へと帰還してしまうかぐや姫との違いがあるとすれば、今後、朝倉が女優として着実にステップアップしていくはずという点。かわいらしい竹の子(幼少期のかぐや姫の愛称)が、「かぐや姫の物語」という大きな“節目”を機に、美しく大地に根を張る竹へと成長することを願いたい。

【作品情報】
かぐや姫の物語

アメーバニュースより引用しました。