「国際平和デー」国連の鐘の願い日本でも 平和の鐘 響かせよう
国連が定める「国際平和デー」の二十一日、平和を祈って日本中の鐘を一斉に鳴らそうと、日本木彫芸術文化財団(東京都文京区)が呼び掛けている。財団理事長の白井常雄さん(74)たちが、木彫りの女神像を国連に寄贈した際に知った国連本部の中庭に置かれた「平和の鐘」の歴史。国連で脈々と続く鐘への思いに共感した。(上條憲也)
白井さんたちは東日本大震災から半年余が過ぎた二〇一一年十月、国連を訪ねた。一九九九年三月十一日に亡くなった岐阜県高山市の仏師、都竹峰仙(つづくほうせん)さん=享年(88)=が彫った女神像を贈るためだ。
「この像は、震災と原発事故で苦しむ日本が心から願う平和への思いが込められている。ぜひ受け止めてほしい」
震災から間もなく、関係者を通じて働き掛けた。国連は通常、個人や団体からの寄贈を受け付けていないが、ニューヨークの本部に招かれた。
この時、白井さんは平和の鐘を初めて知った。平和を祈念して打ち鳴らされる意義に触れ「思いやりや古くから和の心を大切にする日本でも、九月二十一日をそんな日にしたい」と考えた。
女神像はヒノキを彫った高さ五十三センチ。台座には、きのこ雲と、津波のようにうねる波が彫られている。制作した都竹さんは戦時中、修業に出た東京で空襲に遭った。終戦後に高山に戻り、広島と長崎への原爆投下の愚かさを戒める仏像に没頭したという。
女神像は、同時期に彫られた新世弥勒(しんせいみろく)像と風神像とともに長い間、都竹さんと親交のあった高山市内のギャラリーに置かれていた。
「あらためて気付かされた平和。心一つにお祈りしたい」と白井さん。宗教宗派問わず寺院などに趣旨を呼び掛け、都内では護国寺(文京区)で、昨年に続き二十一日正午に鐘が鳴らされる。