橋下氏の辞職表明 出直し選は民意に沿うか

大阪市橋下徹市長が辞職して、出直し選挙に再出馬する意向を表明した。議会側の賛同が得られず実現が困難になっている大阪都構想への「民意」を問う考えだ。

 橋下流の奇策だが、実行されれば乱暴な政治手法と言うしかない。来年度当初予算案の編成などに影響は避けられず、行政の長としても無責任である。

 他党と考えが違うからといって辞職-選挙では短兵急に過ぎる。誠実に話し合い、一致点を見いだす努力を重ねるのが、あるべき姿だ。市政停滞だけでなく多額の選挙経費支出という問題もある。

 橋下氏は「(都構想が)誤解された」と言ったが、二重行政の解消など都構想の理念は理解されたとしても、大阪がどう変わるのかについて説明不足だし、具体的な制度設計も遅れている。

 次回統一地方選前に決着をつけたいようだが、あと1年余りしか時間がない。都構想で民意を問うなら、丁寧に有権者に説明し統一地方選で審判を仰ぐのが筋だ。

 出直し市長選では、他党はあえて対立候補を出さず、“不戦敗”にする可能性もある。その場合、そこで示された民意は弱い。

 橋下氏は以前にも任期途中で大阪府知事を辞職して大阪市長選にくら替え出馬した。都構想を争点にしたダブル選挙は、松井一郎現知事とともに圧勝した。その大勝の再現を狙っているのだろう。

前回の統一地方選府議会の過半数を握った大阪維新の会の躍進は、橋下氏の個人人気に負うところが大きい。従来の政治家にはない発想と発信力でブームを巻き起こし、日本維新の会を結成して国政にも進出した。

 その国政への影響も重大だ。

 橋下氏は当面、国政に距離を置いて都構想に専念することや、出直し選挙に負ければ政界から身を引くという考えも示した。

 維新憲法改正集団的自衛権の行使容認などを掲げている。

 出直し選挙の結果は、橋下氏の去就につながり、中央政界での維新の党勢を左右する。橋下氏の指導力で国政に進出した政党だけに、出直し選の行方次第では、維新の屋台骨が揺らいで、野党再編や憲法改正、安全保障政策の議論にも影響を与えることは避けられないだろう。

 辞職、再出馬は氏の独り相撲である。市民も国民も混乱を望んでいるわけではない。

 

msn産経ニュースより引用しました。