ちあきなおみ ベスト盤、2社同時発売 21年…今再び「喝采」の幕開く

突然芸能界を去って21年がたつのに、いまなお歌謡ファンの心をとらえて放さない歌手がいる。ちあきなおみ(66)。そのベスト盤がレコード会社2社から同時に発売された。代表曲「喝采」でプロデューサーを務めた東元晃さん(78)は、今も愛される理由を「聴く人のイメージを刺激する本当のアーティストだから」と語った。(櫛田寿宏)

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 ベスト盤は、ちあきが所属した日本コロムビアテイチクエンタテインメントがリリースした。ともに2940円。

 青春期の作品を集めたコロムビア盤のタイトルは「ちあきなおみの喝采 おぼえてますか、1972年の大晦日(みそか)に見せた“伝説の歌唱シーン”…。今こそ、ソロヴォーカルの神髄を!」。デビュー曲の「雨に濡れた慕情」や、セクシー路線の「四つのお願い」、日本レコード大賞を受賞した「喝采」、文学的な詞が魅力の「夜へ急ぐ人」、絶妙な一人語りを聞くことができる「ねえあんた」など19曲を収録している。

 東元さんはちあきについて「チョコレートが好物だと知っているぐらいで、決して私生活を見せない人」と話す。のどが丈夫で、いつも万全の状態で臨んでいたそうで、「仕事に対しては本当に厳しく、レコーディングの日にスタジオ入りするときには、もう歌は完成させていた。スタジオは音を確認する場所だった」と振り返る。

 東元さんはビクターなどを経てテイチクに移籍。ちあきも東元さんを追うようにしてビクター、テイチクに移った。そのころのちあきには、「日本の歌を極めたい、自分の理想とする世界を表現したいという気持ちがあった」という。

円熟期の作品が多いテイチク盤のタイトルは「ほのぼのと、切なさと、懐かしさと、ちあきなおみの“黄昏のビギン”はあなたの恋する勇気をサポートします。」。コーヒーのテレビCMで使用された「黄昏のビギン」、都会の片隅の飲食店の最後の日を歌った「紅とんぼ」、コンサートのオープニングで歌うことが多かった「百花繚乱(りょうらん)」、東北弁の語りが入る軽妙な「スタコイ東京」など18曲。

 ある時期、歌の世界を広げるためシャンソンやポルトガル民謡のファドに取り組んだ。「『うまい』といわれるより『いい歌い手』といわれたい」。ちあきは、かつてそう語っていたという。

 駆け落ちする男女、夜明けの波止場、夜の街をあてどなくさまよう女-。ちあきの作品は、哀愁を歌ったドラマチックなものが多い。

 「ステージで歌っていても、客席にもう一人のちあきなおみの耳を置くようにして、どう聞こえるのか考えながら歌っていました。まさに完璧主義者。だから作品は今も輝きを失わず支持され、新しいファンを獲得しているのでしょう」。多くのアーティストを手がけてきた東元さんにとっても、比類のない歌手なのだ。

msn産経ニュースより引用しました。