【阪急阪神ホテルズ食材偽装】「返金」申し出殺到、「性善説」対応も悪質“なりすまし”の恐れも

阪急阪神ホテルズ(大阪市)系列のレストランでメニューと異なる食材が使われていた問題で、各レストランで利用客への返金が始まっている。同社は、レシートを持参したり店の記録と照合し料理を食べたと確認できた場合は料金を返還するとしており、返還想定額は約1億1千万円にのぼる。各ホテルには数百件を超える問い合わせが殺到しているが、過去の事例では、実際に利用していない客が返還金を求めるトラブルが起きた例もあり、ホテル側は難しい確認作業を迫られている。

●「1カ月ぐらいは…」

 JR大阪駅前の大阪新阪急ホテル(大阪市北区)では、問い合わせの電話だけでなく、直接来店する客も相次いでいる。確認がとれたケースでは、実際に返金を始めているという。

 確認を行うにはまずレシートなどを利用するが、レシートを保管していないケースも多い。客から「いつ、何人で、いくら払ったか」などを聞き取り、店で保管しているレシートの控えと照合し、確認がとれれば返金をしている。直接来店できない人には電話で事実確認を行い、口座振り込みも行うという。

 返金に期限は設けていないが、同社が“偽装”した期間が平成18年から最長7年にも及ぶため、対応に時間がかかることもあるという。

●「良識にお任せ」

 過去の事例はどうなっているのだろうか。

 今年6月、約10カ月間にわたりメニュー表記と異なる食材を使ったことが判明した東京ディズニーリゾート(TDR)のホテルやプリンスホテルでも、該当料理を食べたと確認できた客には代金や「おわび金」の返還に応じた。いずれもレシートなどをもとに確認を進めているが、裏付けが困難なケースもあり、関係者は「お客さまの良識にお任せしている部分もある」と打ち明ける。

 運営する全国16施設で最長8年間にわたって食材の不正表示が発覚したプリンスホテルでは、ほとんどの申し出に対応し返金したといい、返金総額は約1億1千万円にのぼった。担当者は「反省を込め、誠意を持って対応した」と話す。

●なりすまし客も

 実際には利用していないにもかかわらず、返金を求める“なりすまし客”があらわれ、トラブルに発展したケースもある。

 平成14年に、輸入肉の虚偽表示をした北海道西友の元町店(札幌市)が返金に応じた際、「レシートなし」で返金に応じていたところ、“なりすまし客”が続出。店側が、約1年間にわたって偽装表示をして売った販売額の3・5倍にあたる約4900万円を支払う事態に陥ったという。この問題をめぐっては、騒ぎに乗じて店から現金を脅し取ろうとしたとして、北海道警が恐喝未遂容疑で暴力団組長の男を逮捕している。

 阪急阪神ホテルズでは、「事実確認を厳密に求めすぎると、本来返さなければいけないお客さまに返金できなくなってしまうこともある」と判断に頭を悩ませている。

 企業側のミスにもとづく顧客への返金作業を行ったことがあるという、ある企業の担当者は「悪質なケースがあるのも事実だが、ミスをしたのはこちら。基本は性善説に立って対応するしかない」と話していた。

msn産経ニュースより引用しました。